一悶着も二悶着もあった旅順「一日」観光

[記事公開日]2012/09/12
[最終更新日]2016/02/16

今日は旅順一日観光の日。天気は大丈夫のようだ。

8時くらいにホテルの朝食を頂く。予想以上に旨い。

9時にフロントから電話があり、「旅順一日観光を決行していいか?」聞かれる。待ち合わせは10時。

「ガイドさんが若くてって可愛い子だったらどうしよう」などと期待しながらフロントで待っていると、ドアマンが迎えの車が来たと呼びに来た。

古い黒いワゴン車である。車に乗り込み、努めて明るく「ニーハオ、こんにちは」と挨拶した。運転席にいたのはサングラスをかけた男。こちらの挨拶に愛想もなく「うん」と頷いただけ。シートベルトを探したが、見つからない。期待は幻滅に変わる。

車は、走りだした。男は全く話しかけてこない。その内、煙草を吸い出した。私は煙草が苦手。しばらく我慢したが、客が我慢することはないと思い、ジェスチャーで「煙草苦手なんです」とアピール。すぐに吸うのをやめてくれた。フロントのTさんには「日本語ができるガイドさん」を頼んだはずだが、この男、片言の日本語すら喋れなそう。「日本語が出来る人を頼んだはずなんですが」と言ってみる。男は、どこかに電話をかけ、携帯電話を私に差し出す。電話の向こうは女の人の声。この愛想がなく全く日本語ができない運転手はこの女の人のお兄さんとのこと。「二百三高地まで行けば日本語ができるガイドさんがいるんだ」と一安心。

クルマは高速道路を荒い運転でぶっ飛ばしている。安心した私はiPhoneのGoogle Mapsで現在位置を確認したり、大連の大気汚染について調べたりしていた。

海沿いの道路に出ると、強烈な磯臭さが襲ってきた。Google Mapsで旅順湾が表示される。日露戦争で日本海軍を苦しめた天然要害である。胸が高鳴ってきた。

旅順GoogleMaps

大連から旅順中心部への所要時間は40~50分ほどだった。高層ビルが立ち並ぶ大連とは違い、旅順市内は高層の建物もなく田舎町という感じ。大連に比べ、バイク乗りが多い気がする。軍港都市のせいか、壁に貼られた共産党のスローガンの横断幕を何度か見かけた。写真撮りたかったが、ガイドブックに「旅順では軍が管理、管轄する場所には、現在もなお厳しく立ち入りが制限されている。(中略)これらの制限地域に無断で立ち入ったり、近づいたりした場合、公安警察により罰金や拘留などの処分を受けることがあるので十分な注意が必要だ。また、開放された場所でも軍の施設や港に停泊する艦船などの写真を取ることは、原則禁止されている。」とあったので写真撮影は避けた。

二百三高地の入り口ゲートで「降りて、お金払ってこい」みたいなことを言われた。入場料などはこっち持ちなのね、ふーん。ゲート前は広い駐車場になっている。

登山の出発地点となる場所に到着。先ほどの電話口の女の人が寄ってきて、挨拶。片言の日本語で「私、忙しいから」とか何とか言っている。「忙しくて、迎えにいけないからお兄さんを手配した」と理解。日本語何とか通じるから良かった。

二百三高地頂上までは歩きか登山バス。バスは100元とのこと。特に迷わずバスを選ぶ。95%の人は歩きを選んでいた。バスには先客がいた。小奇麗な格好をした日本人のおばちゃんたち。聞くと、星海広場で行われていたファッションショーにジュエリーを展示していたらしい。この時は、このおばちゃんたちもさっきの女ガイドのお客さんとは知らず「旅順一日観光したいから、私は個人ガイドを頼んだんですよー」なんて言っていた。

右上が登山の出発地点。バスは左の道、徒歩は右の道を行く。左下に見える丸いものは「爾霊山記念碑」。

爾霊山記念碑GoogleMaps画像

※写真のスクリーンショットは後日撮影したもの。

爾霊山記念碑は、乃木希典が二百三高地争奪戦の戦死者を弔うために建てた弾丸型の記念碑。乃木希典も次男をこの戦闘で亡くしています。爾霊山はもちろん「二〇三」をもじったもの。

乃木希典が詠んだ漢詩。

鐵血覆山山形改(鉄血山を覆いて山形改まる)
萬人齊仰爾霊山(万人斉しく仰ぐ爾霊山)

爾霊山記念碑画像

登山道の傾斜はこんな感じ。

二百三高地登山道

爾霊塔まで来たが、女ガイドは一緒に歩いているだけで、解説などはしてくれない。日本人ツアー客に混じって、解説を聞いていた。解説できるほどの日本語力はないみたい。

見たかった二百三高地からの旅順港の眺め。今回の旅の目的はほぼ果たされた。ガスっているけど、旅順港に浮かぶ船まで見える。

脳内では、NHKのスペシャルドラマ『坂の上の雲』のワンシーン、「そこから旅順港は見えるか?」(児玉源太郎)、「見えます。各艦一望のうちにおさめることができます」が再現されていた。

バルチック艦隊が極東に到着する前に、旅順港に留まるロシア艦隊を殲滅しなければ、日本は朝鮮半島周辺の制海権を失い(=朝鮮半島との補給路を絶たれ)、対ロシア戦勝利は不可能になる・・・そう考えられていたため、旅順港を一望でき、湾内に留まるロシア艦隊を砲撃可能な、ここ二百三高地の価値は重大だった。

二百三高地から旅順湾

爾霊塔のすぐ脇にあるお土産屋を覗く。年季の入った銃弾が「日露戦争当時の銃弾」という説明書きとともに売られていた。何かしら買おうかと思ったけど「買っていい」と思えるものがない。マグネットを見ていたら、「それ特別に限定20個で造ったもの」とか嘘っぽいセールスを聞かされる。テキ屋で売られているような粗い作りのものだったけど・・・それなりの値段が付けられていた気がする。ここに限らず、価格交渉するの面倒臭いから、最初から適正な価格つけておいてくれよと思う。そちらのほうがスマート。

女ガイドに旅順湾をバックに写真を撮ってもらう。二十八サンチ榴弾砲の方に向かう。その途中、「夜の予定は?」とか「ゴルフ場の案内もできる」と言ってきた。興味が無いと伝え、「ところで1日観光ってことだけれどガイドは何時まで可能なのか」と聞いた。そしたら、「14時まで」と。それじゃ半日観光じゃないか。おばちゃん達が女ガイドに頼っている様子から、おばちゃん達もこの女ガイドのお客さんだということを知った。

爾霊塔、ロシア式150mmカノン砲、二十八サンチ榴弾砲を見学したら、もう帰路である。私はまたバスで。おばちゃん達のこの後の予定を聞いてみた。大連に帰って観光する予定らしい。俺は旅順の一日観光をしたいのだが、どうなるんだ。

女ガイドに今後の予定を聞くと、俺も含めて大連案内をするつもりだったらしい。俺は「旅順一日観光を頼んだんだ」というと、「旅順はもう見るとこないですよー」とか言う。それはこっちが決める問題なんだけれど。「まだ旅順観光したいならもう100元必要」とか言い出す。私は「ホテルで800元で旅順一日観光を頼んだんだ」と譲らない。女ガイド、お兄さんと話したあと、「どこ行きたいですか?」と聞くので、ガイドブックでいくつか指し示した。

おばちゃん達は女ガイドと大連に。私は、日本語の全くわからない女ガイドの兄と旅順観光ということになった。男にガイドブックを見せて、白玉山と水師営会見所旧跡と東鶏冠山北堡塁(とうけいかんざんきたほるい)遺跡を指さしたが、東鶏冠山北堡塁遺跡については「こんな狭いところ行けない」みたいなことを言う(本当にそう言っていたかわからない)。ガイドブックに坑道が載っていたから「こんな狭いところは車通れない」とでも思ったのだろうか。観光名所なんだから車で行けないはずはないのだが・・・

白玉山に到着。また入口ゲートで、個人とクルマのチケット代を払う。中学生くらいの修学旅行生がいた。

白玉三の修学旅行生

売店に連れられ、爺さんを案内される。爺さん、変な写真集とかを売りつけようとする。私は「要らない」と首を振って、白玉山からの景観を見に行く。白玉山、国家AAAA級景区だそう。白玉山からは旅順湾一望。旅順湾の地形を見たいならここからが一番かも。

白玉山から旅順湾の眺め

近くにいた中国人にお願いして写真を撮ってもらう。車に戻ったら、男が写真撮ってやるみたいなことを言う。ホゥ、意外に優しいじゃん。お礼を言った。日本語わからないだろうけど。

次に向かったのは水師営会見所。乃木希典とステッセル中将が停戦条約を結んだ場所。

水師営会見所

丁度、そこのガイドさんがツアー客相手に説明をはじめるところだったら、それに交じった。かなり日本語上手な人が、パネルの説明をしていく。さっきの女ガイドもこれくらい熟練だったらよかったのに・・・パネルの写真は撮ってもいいが、隣の水師営会見所はNGとのこと。

水師営会見所の奥には翡翠や腕時計などが陳列されている棚がある。旅順は昔から翡翠の生産地として有名だったらしい。歴史的に価値がある(?)翡翠とか腕時計とかのセールスが始まった。いずれも「なんでも鑑定団」に出したら1万円以上の価値のあるものだという(笑)。老朽化したこの施設の修復費用としての寄付の意味も込めて、1個1万円で買って欲しいという。1万円以上の価値があるなら、売って、そのお金を修復費用に充てれば、と思うけど(笑) この商法の現場写真を撮られたくないから、写真禁止なんだろうと推測する。

隣の土産物屋を見てみたが、何も買わず。

土産物屋の隣に食堂あったから、「ここで喰おうぜ、俺の分も出せ」と言われるものと思い、私もお腹空いていたからそのつもりだったけど、男は「食堂には行かない」的な素振りを見せる。もう14時で、「旅順半日観光」が終わったから大連に帰るつもりらしい。

大連に向かう高速道路が近づいてくる。「大連に帰るぞ?」みたいなこと言うから、ガイドブックの旅順駅の写真を指さしながら「ここ、ここ」とアピール。相手は困って、妹に電話をかけた。女は「あなたの行きたいところ回ったし、もう大連に帰るよ」と。私はまだ旅順駅とかを見たいと伝える。相手は、それは無理だ、旅順駅は遠い、ガソリン代も高い、どうしても行きたいならもう200元よこせという。「私はホテルに800元で1日観光を頼んだんだ」というと、「ホテルは関係ない」という。「関係ないわけ無いだろう」と。一旦電話切る。ホテルに電話かけようと思い、男から携帯電話借りようとするが貸してくれない。もう一回電話かかってきた。また同じような遣り取りをして、私もいい加減疲れた。「もうめんどくさいから帰っていいわ」「だれがめんどくさいですか?」「あなたがめんどくさい」「めんどくさくないですよ、あなたがめんどくさい」とヒートアップしたやりとりして、電話を切った。仕方なく男に大連に向かってもらった。男はまた煙草を吸い出した。その途中、また電話かかってきた。どういうわけか、女は「あなたの好きなところ行っていいですよ、どこ行きたいですか?」と聞いてくるので、ガイドブックに載っている東鶏冠山北堡塁と旅順日露監獄、旅順駅の中国語の読み方を伝えた(結果、これはちゃんと伝わっていなかった)。女の態度の急変はなんだ?ホテルとのあいだに何かあったのか。

女に指示された男は不満そうにまた旅順へ引き返す。男が「飯食うか?」みたいなことを言ってきて、店に前に車を停めた。男と一緒に飯を食い、私が支払いをするのかと思いきや、私は一人にされた。海鮮を選ぶスタイル。なまこを食べてみたかったのでそれ一つだけ頼んだら、何故か笑われた(こんな小食でいいのかということだったみたい)。出てきたのは小皿に乗ったなまことあんかけ御飯。

海鮮レストラン外観

食器とコップ

なまこ料理

ところで給仕の男は、料理を持ってきたのはいいが、テーブルに置かない。俺がテーブルを指し示すと、舌打ちされた。なにかイケなかったのか? 珍しいから頼んでみたがなまこは美味しくなかった。なまこ2、3齧りとおかゆだけ食べた。さすがに足りなかったので、海老とカシューナッツの炒め物を追加した。生臭さが消えてない海老でいまいち。クルマに戻ると、男は煙草を吸っていた。

男は勝手に車を走らす。大丈夫かなと思っていると、なんかよくわからない、海際のスポットに連れて行かれた。女ガイドに正確に伝わっていなかった。「着いたぞ、降りろ」みたいなことを言うんだけど、俺が「ノーノー、ここじゃない」と首を横に振ると、「なんだよぉ」みたいな対応。私は、ガイドブックの東鶏冠山北堡塁と旅順日露監獄を示す。東鶏冠山北堡塁については先ほどと同じ「こんな狭いところ車で行けない」みたいな反応。

iPhoneのGoogle Mapsで旅順日露監獄の場所を示す。わかったのかわかってないのかわからないけど、また車を走らせる。しかし、旅順日露監獄がある北には向かわず、南に向かっている。山道に入った。Google Maps見ると、その先は道が表示されてない。恐怖を感じた。文句ばっかり言ってるから殺されるんじゃないかと。Google Mapsを見せながら「こっち道がないよ!」的なことを言ったが、男はこの先に何かがあるといった反応。何かの施設が見えてきた。ゲート前に止まり、「行ってこい」というんだけど、ガイドブックにも載っていないここは日本人入場不可なところなんじゃないか?案の定、そうだった。中国人しか入れない施設。言わんこっちゃない。

旅順日露監獄へは、iPhone見ながら、俺がナビする。無事に着いた。

旅順日露監獄

日本人は私だけ。他は中国人の団体が何組か。見学のペースをゆっくり目にして、なるべく団体と同席しないようにしていたのだが。処刑場や、刑死者の土葬の復元模型がある部屋で中国人と同席してしまい、なにか言われるんじゃないかとドキドキした。

帰ってきて、車に乗ったら、俺が行かなかった方に何かあるようなことを言うのだが、意味がわからないので、「もう見たから」的な反応をしてたらまた舌打ちされた。ガイドブックの旅順駅を指し示すと、「わかった」みたいな反応。旅順駅近くに停車。男が何かを言っている。伝達不能なことを悟ると、メモ用紙に何かを書きだした。「jun gang bu hang xia」。全く意味がわからない。今度は漢字を書きだした。「軍港不◯(不明な字)下」。旅順駅の対面にある、軍施設の写真を撮るなということだろうと勝手に理解。クルマが飛ばしまくってる車道を渡るのは怖いわー。

満鉄支線の終着駅・旅順駅。

旅順駅

東清鉄道時代の設計かとおもいきや、『地球の歩き方 大連・瀋陽・ハルビン』によれば、「現在の旅順駅は満鉄が1906年に作ったもの(ロシア人設計)です。実は、初代旅順駅(1900年)は現存し、現旅順駅のすぐ隣にあります。」とのこと。

この写真の奥に写っている赤い屋根が初代旅順駅なのかな?

初代旅順駅

旅順駅の時刻表を写真に撮ってきた。もう17時くらいになっていた。

参考:大連・旅順間の鉄道時刻表

「これでもう大連に帰っていいんだな?」的なことを聞かれ、「OK」と答える。相手もほっとしたような感じだ。帰りにまた男、煙草吸い出した。いろいろあったけど、まぁ、結果的に一応旅順一日観光できたし、まぁ、いいやと放っておいた。

大連市内に戻ってくると帰宅ラッシュの時間で渋滞している。支払いをこの男に直接するのか、ホテル経由にするのか気になった。18時頃、ラマダプラザ大連ホテルに到着。男が「金」みたいなジェスチャー。俺は「ホテルへ、それともあなたへ?」。男「俺だ」。800元払う。男、枚数を確認し、時計を指差して、「こんな遅くまでなったんだから、もう100元」みたいなことを言う。俺は拒否。しばらく、中国語と日本語で咬み合わないやり取り。俺が「埒があかないから、ホテルで通訳を介して話そう」と言ったら、「ホテル」という言葉に反応したようで、男は「わかった、もう行け」的なジェスチャーをする。俺は最後に握手を求めたが、相手は納得行かない様子で、また腕時計を指さして、また「こんな遅くなったんだから100元よこせ」的な話になってしまった。握手を諦め、「わかった、バイバイ」というと、男も納得はしてない顔だが一応うなづいていた。

フロントにTさんがいたら、このことを伝えようと思ったが、残念ながら不在。男に直接ガイド料を払ったから、ホテルからの支払いはもう不要とも伝えたかった。

部屋に戻り、休憩した後、ホテルの日本料理屋「江戸前」へ。

天ぷらを間違えて二品頼んでしまい、食べきれないので、隣に座っていた方にさし上げた。

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